アルツハイマー病者から見た世界「私は誰になっていくの?」
   クリスティーン・ボーデン著・・・・・を読んで  山崎さん
 
 1995年5月に46歳でアルツハイマー病の初期との診断を受ける。彼女は、国の首相、内閣省の中でも強い権限を持つトップ公務員として忙しい日々を過ごしていた。又、三人の娘の母親でもあり、暴力的な夫と離婚し、シングルマザーとして再出発した直後の発症であった。はしがきにこの本を執筆した第一の理由は、ごちゃ混ぜになった言葉や数字の迷路の中で困惑している何万人ものアルツハイマー病の人達を助けるためにほかなりません。「私たちが痴呆症であったとしてもたとえそのために理解しがたい行動をとったとしても、どうか価値ある人としての敬意をもって私達に接して下さい」との願いが書かれています。本は病気とは思えない文章能力で経過を辿り、客観的にかつ理路整然と書かれてあり「アルツハイマー病の人、本人が書いた本?」と何度も疑問を持ちながら読み進みました。
  しかし、巻末にインタビューに答える章があり、彼女の努力は人並みならぬものであったことを知りました。1日の行動を1つ1つ細かく書き留め、下準備をし、1日4〜5時間も書く作業に費やしていた。非凡なる才能もさることながら、消えていく記憶、交錯する行動を自分で自覚し挑戦し続け、病気との闘いを克服していたのでした。アルツハイマー病とは脳が徐々に消失していく病気で、原因も治療法もまだ解明されていないところに怖ろしさがあります。脳とは人間の身体のすべてを機能させているもので、さらに記憶し自己意識を持ち、思考し、理解し、表現して「自分が自分である」ということを支えている重要な部分です。
  しかし、その脳の病気と診断を下されたクリスティーンさんが受け止めた思いは人としての本当の能力は魂であり、知的能力がなくなり全てが消えてしまっても、魂は決して消えはしない。そこに本当の自分がある、欲も無く飾ることのない本当の自分になっていく・・・・との思いに到達して心の安らぎを得ていくのです。この強さを誰しもが持てるのだろうかと思います。もし自分だったら、ただ、悲嘆に暮れる日々を過ごすだけで自分を見失ってしまうだろうと・・・・。
 でもきっと、私も願うでしょう「最後まで人として愛を持って接してほしい」と・・・・私も今ヘルパーの仕事に就いていて何人かのアルツハイマー病の方と接しています。この本に書かれているように、皆純粋な世界に生きて、嬉しい時投げかけてくれる笑顔はとびっきり明るく、私を嬉しくさせてくれます。そんな笑顔が数多く出るよう、優しさという手を差しのべ、温かい心で接していかれるよう、自分を磨いていかなければと思います。


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